※平行ニコルの顕微鏡写真:全て偏光の振動方向は画像の左右方向(⇔)
蛇紋石 serpentine Mg3Si2O5(OH)4 [戻る]
単斜晶系など 二軸性(−)2Vx=40〜67°(アイソジャイアーが観察できるほど粗い結晶は希)
α=1.558〜1.567 β=1.565 γ=1.562〜1.574 γ-α=0.004〜0.007
※主にアンチゴライト,リザーダイト,クリソタイル(白石綿)の多形があり,アンチゴライトとリザーダイトは長く伸びたシート状,クリソタイルは中空の極めて細い繊維状。
色・多色性/無色〜淡緑色。多色性はあまり見られない。
形態/アンチゴライトやリザーダイトは微細な湾曲した鱗状や片状,微細なよじれたリボン状。クリソタイルは繊維状。
へき開/粒子が細かく,へき開に見えるものはシート状結晶や繊維状結晶の粒界のことも多い。
消光角/伸び方向に対し直消光。
伸長/正のことが多いが,負のこともある。
双晶/偏光顕微鏡では認めらない。
累帯構造/Mg→Feの置換が少し起こるが,限定的でいずれも無色〜淡緑色。光学顕微鏡では累帯構造は認められない。
産状 ほぼ蛇紋岩固有の鉱物で,それは,かんらん岩から変わってできる(蛇紋石はアルミニウム欠乏条件でできる鉱物で,超苦鉄質岩以外の岩石には出現しにくい。一方,緑泥石はアルミニウムがあると生成しやすく,低温生成物として岩石一般に広く産する)。数%のニッケルを含むものは鮮やかな緑色で,蛇紋岩の割れ目にシート状をなし,鏡下では,淡い翠緑色に見える。 なお,超苦鉄質岩以外ではドロマイトスカルン中のかんらん石の微小な変質物として見られ,この蛇紋石もドロマイトスカルンがアルミニウムに乏しいために生成したものである。 |
蛇紋岩化が進んだかんらん岩 かんらん岩のかんらん石や輝石の粒界に沿って水分が作用し,蛇紋石が生成しつつあるもの(平行ニコルで屈折率が高く,クロスニコルで干渉色が高いのがかんらん石。平行ニコルで屈折率が低く,クロスニコルで1次の灰〜白色のものが蛇紋石)。 |
蛇紋岩 かんらん岩が完全に蛇紋岩になったもの。全体的に蛇紋石で,平行ニコルで黒いものは,もとのかんらん石や輝石中に含まれていた鉄分が 蛇紋岩化の際,酸化されて磁鉄鉱になったもの。 -------------------------------------------------------------------- 肉眼で見た蛇紋岩 蛇紋岩を構成する蛇紋石自体は灰緑〜緑色だが,磁鉄鉱の微粒子を含むため暗緑色〜緑黒色のものが多い。 |
蛇紋岩(クロスニコル) しばしば,蛇紋石はこのようにメッシュ状の構造をなす。後にできたものは脈状で,脈の方向に垂直に結晶成長している。 |
ドロマイトスカルン中の蛇紋石 Ol:かんらん石(苦土かんらん石の端成分に近い),Cal:方解石 ドロマイト(苦灰岩)が花こう岩などのマグマで接触変成を受けて生じたスカルン(ドロマイトスカルン)には,かんらん石がスカルン鉱物として見られ,それはしばしばスカルン形成後の熱水で変質し,蛇紋石化し,粒状のかんらん石後の仮像になっている。その蛇紋石は,干渉色は1次の灰色程度で微細な片状集合体で,上画像のようにその中に部分的に元のかんらん石(干渉色が高い)が残存していることもある。ドロマイトスカルンはAlに乏しい岩石なので,かんらん石の変質物としては緑泥石よりも蛇紋石ができやすい。 |
ドロマイトスカルン中の蛇紋石 Ser:蛇紋石,Ol:かんらん石(苦土かんらん石の端成分に近い),Cal:方解石 かんらん石を含むドロマイトスカルンは,スカルン形成後の熱水変質作用で変質していることがある。その場合,上画像のように,細い割れ目に沿い,そのかんらん石が変質した後の成分が蛇紋石脈となっている場合がある。なお,上画像では,それとともに方解石も再沈殿して脈状になっている。 ドロマイトスカルンはAlに乏しい岩石なので,かんらん石の変質物としては緑泥石よりも蛇紋石ができやすい。 |